認知・行動障害に対するリハビリテーション(脳血管障害、外傷性脳損傷など)

脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、外傷性脳損傷、その他の脳疾患による認知・行動障害のリハビリテーション

 大脳のほとんどの部分が、いわゆる「高次脳機能」、すなわち認知や行動に関わっています。したがって、脳血管障害や外傷によって大脳に損傷を受けた場合、高い確率で認知・行動の障害を来します。
 「高次脳機能障害」は単一の障害を指す言葉ではなく、認知や行動に関わる様々な障害の総称です。わたしたちの診療科では、複雑な認知・行動の障害(いわゆる高次脳機能障害)を詳細に評価・分析し、それに基づいたリハビリテーションや薬剤介入を行っています。
 以下に「高次脳機能障害」に含まれる、代表的な障害について解説します。

失語症

 考えを言葉を用いて表現したり、聞いた言葉・読んだ言葉を適切に理解することの障害です。95%の人で言語中枢が左大脳半球にあるため、左大脳の損傷に伴って生じることが多いです。しかし、右大脳半球損傷によって失語症が生じることもあります。

失認症

 視覚、触覚、(非言語性)聴覚を通して対象を認識することの障害です。とくに対象を見て認識することの障害である視覚失認は、日常生活の大きな支障となります。視覚失認は「目がみえない」状態ではなく、「見えている対象が何であるか」が分からない状態です。側頭葉・後頭葉の損傷によって生じる場合がほとんどです。

健忘

 記憶の障害です。特に、エピソード記憶と呼ばれる、「いつ誰と何処で何をしたか」などの文脈を持つ記憶の障害を指します。健忘はアルツハイマー病をはじめとする認知症疾患で高頻度に認められますが、前交通動脈瘤破裂に伴うクモ膜下出血、脳炎、低酸素脳症後の後遺症として現れることも少なくありません。

遂行機能障害

 「遂行機能」は、言語、知覚、記憶などの認知機能を統合し、効率的に作業を行ったり、難しい問題に対処する際に必要な認知機能を指す用語です。端的にいえば、「もっとも高度な認知機能」ということになります。前頭葉の損傷によって遂行機能障害が生じることがよく知られていますが、ある程度大きな脳損傷であれば部位を選ばずに生じる障害です。

精神症状・行動障害

 言語、記憶などの認知機能の障害が患者さん、家族の日常生活に大きな影響を与えるのは言うまでもありません。しかし、認知機能の障害以上に社会生活に深刻な影響を及ぼすのが種々の精神症状・行動障害です。これには抑うつ、興奮、脱抑制などの気分・行動コントロールの障害、幻覚や妄想などの精神病様症状など様々な症状や障害が含まれます。
 病気や外傷後の早期に出現し徐々に消退するものもあれば、初めは問題がなかったのに数カ月、数年経てから症状が顕在化する場合もあります。リハビリだけで改善することは少なく、環境調整や薬剤介入が必要になる場合がほとんどです。


 その他、失行症、視覚運動失調、半側空間無視、失読、無為・無関心、睡眠・覚醒障害など、様々な認知・行動障害が脳損傷に伴って出現します。