講座紹介

高次機能障害学分野、高次脳機能障害科へようこそ

 

高次脳機能とは、もっとも人間らしい複雑な神経の機能です
わたしたちが日々いろいろなことを考えたり、話したり、趣味を楽しんだりできるのは高次脳機能のはたらきです。
注意、記憶、言語、視空間認知、遂行機能など、さまざまな機能が含まれます。
高次脳機能は脳の複雑なネットワークにより成り立っています。

高次脳機能障害は、脳の病気や外傷でおこります
脳血管障害、脳炎、脳腫瘍などの脳の病気や脳の外傷の急性期治療が終わった後に、社会生活に困る症状が出ることは昔から知られていました。
しかし、命が助かったのだから、麻痺が残らなかったのだから、とあまり重視されませんでした。
実際は、注意、言葉、記憶などに障害があると以前とおなじ生活を送るのは困難です。

日本初、日本で唯一の高次脳機能障害専門の臨床教室です
当分野は1994年に高次脳機能障害の診断・治療、研究、教育を専門とする臨床教室として全国ではじめて東北大学に誕生しました。
山鳥重先生(1994-2003)が築き、森悦朗先生(2003-2017)が発展させ、2017年より私が担当しています。
教室の三本柱は「局所脳損傷による高次脳機能障害」、「認知症」、「てんかんの高次脳機能障害」です。
・局所脳損傷の後遺症として高次脳機能障害はしばしばみられます
脳は部位によって機能にちがいがあります。
脳の病気や外傷によって脳の一部が壊れると(局所脳損傷)、壊れた部位により異なる高次脳機能障害がおきます。
左側の脳損傷で失語症、右側の脳損傷で視空間認知障害が代表的です。
原因疾患は何か、どんな高次脳機能障害があるかを個々人で見きわめたうえで治療を行います。
原因疾患の治療や再発予防は神経内科・脳神経外科など関連各科と連携して行います。
高次脳機能障害の治療は、どんな症状かをご本人や周囲の方に知っていただくところから始まります。
リハビリテーションを中心に治療し、環境整備、必要な福祉制度の利用への道筋をつけて、社会復帰できるよう支援します。
・認知症は高次脳機能障害により社会生活に支障をきたしている状態です
認知症は一つの病気ではなく、その原因はさまざまです。
はじめに原因疾患およびどのような高次脳機能障害があるかをきちんと診断することが大切です。
認知症の約10%は治る認知症と言われ、早めに見つけて治療すれば、症状が改善します。
当科は特発性正常圧水頭症をはじめとする治る認知症の治療について豊富な経験があります。
診断困難な認知症、社会的影響の大きい若年性認知症を他の医療機関と連携して診療します。
・てんかんの治療には高次脳機能の評価が大切です
てんかんは脳の機能異常により、脳の興奮を繰り返す疾患です。
てんかん学分野と連携して、てんかんにおける高次脳機能障害を診断しています。
てんかんの外科的治療では、脳の機能分布を調べる検査で、機能を温存する治療につなげています。

高次脳機能障害・認知症の診断や病態解明につながる研究をしています
おひとりおひとりの患者さんを大切にして、精査、治療するところから研究は始まります。
症状を知るための神経心理学的検査、その神経基盤を知るための神経画像的手法、神経の機能を知るための神経生理学的手法などを統合して研究しています。
レビー小体型認知症、特発性正常圧水頭症についての我々の成果が、広く臨床に役立っています。
人のこころにつながる高次脳機能のしくみを知る研究も、生理学、情報学、工学、言語学など幅広い研究者と連携して行っています。
医師だけでなく、言語聴覚士、作業療法士、看護師、心理士など多彩な教育を受けた大学院生が、それぞれの視点を活かした研究を進めています。
高次機能障害学分野では、高次脳機能障害・認知症の診療を行うとともに、研究・教育を推進し、これらのエキスパートを育てたいと思っています。また、臨床教室の強みを活かし、ヒトならではの高次脳機能のしくみに迫る研究をめざしています。この分野に興味をもつ方々の参画をお待ちしています。

東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学分野 教授 鈴木匡子